プラットフォーム企業法令遵守事業約束(第3回公開)

一昨日、昨日に引き続き今朝(現地時間午前9時)も、主要プラットフォーム企業34社中、11社の約束が国家市場監督管理総局ウェブサイトで公表されました。一昨日が12社、昨日が11社、本日が11社で、これで34社全社が公表されました。すべての約束の日付が4月13日です。

本日の11社(原文名):爱奇艺、贝壳找房、当当网、多点、去哪儿网、搜狗、58同城、饿了么、阅文、阿里巴巴、贝贝网

4月14日公表済みの12社(原文):百度、京东、美团、奇虎360、微店、新浪微博、字节跳动、叮咚买菜、拼多多、小红书、苏宁易购、唯品会

4月15日公表済みの11社(原文名):滴滴、快手、每日优鲜、哔哩哔哩、国美、盒马鲜生、携程、蘑菇街、网易(严选)、云集、腾讯

アリババも約束を公表しましたが、あまり詳細なものではありませんでした。やはり正式な行政指導書に基づき、4月30日までに提出される改善計画の中身を見ないといけないようです。

また、昨日の投稿で注目としていた検索エンジン・搜狗も含め、 14日に公表済みのウェイボの約束のように、独占禁止法と関係のなさそうな世論工作関係の約束が盛り込まれたものは ありませんでした。 テンセントによる搜狗100%子会社化の審査では、情報セキュリティ、個人情報保護関係の約束が盛り込まれるようですので、そちらの行方を見守りたいと思います。

カテゴリー: 独占禁止法, 不正当競争禁止法, 中国, 価格法 | タグ: , , , , , , , , , , , | コメントをどうぞ

プラットフォーム企業法令遵守事業約束(第2回公開)

昨日に引き続き今朝(現地時間午前9時)も、主要プラットフォーム企業34社中、11社の約束が国家市場監督管理総局ウェブサイトで公表されました。昨日が12社、本日が11社なので、明日は残りの11社が公表されると思います。

11社(原文名):滴滴、快手、每日优鲜、哔哩哔哩、国美、盒马鲜生、携程、蘑菇街、网易(严选)、云集、腾讯

残る11社(原文名):爱奇艺、贝壳找房、当当网、多点、去哪儿网、搜狗、58同城、饿了么、阿里巴巴 、阅文、贝贝网

4月14日公表済みの12社(原文):百度、京东、美团、奇虎360、微店、新浪微博、字节跳动、叮咚买菜、拼多多、小红书、苏宁易购、唯品会

テンセント、滴滴も公表されました。アリババはまだです。残った中では、テンセントによる100%買収が現在、企業結合審査対象となっている検索エンジン・搜狗が注目でしょうか。

本日の11社の約束いずれも4月13日の指導内容に沿って、二者択一の強制を含む独禁法違反行為等を行わない、利用者の選択権を保護する、個人情報を違法に収集濫用しない等を約束し、(一部明記していない者もありますが)社会監督を受けるとしています。

昨日公表分のウェイボの約束のように、独占禁止法と関係のなさそうな世論工作関係の約束が盛り込まれたものはないようです。

每日优鲜が、約束の冒頭に自社の宣伝文句を入れているのにはちょっと驚きましたが、ご愛嬌でしょう。

あと本日まで公表の12+11の合計23社の約束の日付はいずれも行政指導会の開かれた4月13日付でした。1か月以内に提出・公開との指導でしたが、全社とも(当局の事前通告があったのか)即日に提出したということなのでしょう。

カテゴリー: 独占禁止法, 不正当競争禁止法, 中国, 価格法 | タグ: , , , , , , , , , , , | コメントをどうぞ

プラットフォーム企業法令遵守事業約束(第1回公開)

驚いたことに、昨日4月13日に国家市場監督管理総局等から30日以内に約束を提出・公開しろと指導された主要プラットフォーム企業34社中、12社の約束が本日4月14日(現地時間午前9時)、同総局ウェブサイト上で公表されました。今後3日間連続で公表していくようです。

12社(原文名):百度、京东、美团、奇虎360、微店、新浪微博、字节跳动、叮咚买菜、拼多多、小红书、苏宁易购、唯品会

アリババ、テンセント、滴滴は未公表です。

いずれも4月13日の指導内容に沿って、二者択一の強制を含む独禁法違反行為等を行わない、利用者の選択権を保護する、個人情報を違法に収集濫用しない等を約束し、社会監督を受けるとしています。

このうち 新浪微博 (ウェイボ)の約束に、

3.正确发挥微博平台价值,不滥用市场支配地位、垄断协议和违法进行经营者集中等行为,充分做好正能量传播工作,创建绿色和谐网络舆论环境。

という異質な項目が含まれているのが非常に目立ちました。最後の「プラスエネルギーの宣伝活動を十分に行い、グリーンかつ調和のあるネットワーク世論環境を作り出す」とはどういう意味なのでしょうか。「プラスエネルギーの宣伝活動」は共産党の方針に沿った宣伝活動という意味であろうと想像できますが、「グリーンかつ調和のとれたネットワーク世論環境」は非常にあいまいです(当日追記:いずれも世論工作の世界ではよく使われる用語のようですが、用例を見てもよく分かりません・・・)。アリババのウェイボなどメディア売却観測記事との関係では、この約束で当局側は矛を収めることになるのか、さらにアリババによる売却を求めるのか、引き続き要注目です。

カテゴリー: 独占禁止法, 不正当競争禁止法, 中国, 価格法 | タグ: , , , , , , , , , , , | コメントをどうぞ

国家市場監督管理総局、中国共産党中央サイバーセキュリティ・情報化委員会弁公室及び国家税務総局と、インターネットプラットフォーム企業行政指導会を開催

2021年4月13日、国家市場監督管理総局は、中国共産党中央サイバーセキュリティ・情報化委員会弁公室及び国家税務総局とともに、インターネットプラットフォーム企業行政指導会を開催しました。

同指導会にはアリババ、テンセント、京東、百度、滴滴、美団、バイトダンス等等、プラットフォーム経済を代表する企業34社が参加しました。

原文名: 爱奇艺、百度、贝壳找房、滴滴、当当网、多点、京东、快手、美团、每日优鲜、奇虎360、去哪儿网、搜狗、微店、58同城、新浪微博、字节跳动、哔哩哔哩、叮咚买菜、饿了么、国美、盒马鲜生、拼多多、携程、小红书、阅文、苏宁易购、阿里、贝贝网、蘑菇街、网易(严选)、云集、唯品会、腾讯

同会議は、アリババ事件の警告作用を十分に発揮することを要求し、主要なプラットフォーム企業に「畏敬の念を知り、ルールを守り」、期限内に全面的に問題を改善し、プラットフォーム経済新秩序を確立することを明確に求めたとのことです。

同会議は、厳しく懲らしめなければならないものとして、二者択一(二選一)の強制、市場支配的地位の濫用、(スタートアップ企業の)芽を摘み取るM&A(原文:掐尖并购)、現金補助(原文:烧钱、結果として不当廉売)による社区団体購入市場の奪取、ビッグデータを用いた新旧ユーザー間の価格差別(原文:大数据杀熟)、情報漏洩及び税関係の違法行為等の問題を挙げ、その中でも(アリババ事件で問題となった)二者択一の強制がとりわけ突出しており、プラットフォーム経済分野の資本による好き放題かつ無秩序な拡張を突出して反映するもので、市場競争秩序を公然と踏みにじり破壊するものである。二者択一の強制はイノベーション発展を抑制し、プラットフォーム内事業者と消費者の利益に損害を与え、危害は極めて大きく、断固として根治しなければならない、と指摘しています。

二者択一の強制及びその他の突出問題に対し、同会議は、プラットフォーム企業が正確な方向を把握し、責任意識を強化し、国家利益優先を堅持し、法規に従った運営を堅持し、社会責任の履行を堅持し、「5つの厳格な防止」と「5つの確保」を行う必要があると明確に指摘しました。

1.資本の無秩序な拡張を厳格に防止し、経済社会安全を確保する。

2.独占の秩序喪失を厳格に防止し、市場公平競争を確保する。

3.技術による封殺を厳しく防止し、業界のイノベーション発展を確保する。

4.ルール・アルゴリズムの濫用を厳しく防止し、各当事者の合法権益を確保する。

5.システム閉鎖を厳しく防止し、エコシステムの開放・共有を確保する。

各プラットフォーム企業は税収法令法規、政策制度に照らして、税関係問題を全面的に厳密調査を実施、自主的に調査是正しなければならない、とも指摘しています。

同会議は、各プラットフォーム企業が1か月内に全面的に自主検査を行い、1つ1つ徹底的に改善し、社会に向け「法令遵守事業約束」を公開し、社会監督を受けることを要求したとのことです。市場監督管理部門はプラットフォーム改善状況に対し追跡検査を組織し、改善期限後、プラットフォーム企業が二者択一の強制など違法行為を行ったことを発見したら、一律に厳重に処分するとのことです。

同会議は「政策のボトムラインは超えてはならず、法律のレッドラインは触れてはならない」ことを強調しました。プラットフォーム企業の違法行為に対する規律・統治の強化は、決して国家によるプラットフォーム経済を支持し奨励する態度の変更を意味せず、「2つのいささかも揺るがせにしない」原則を堅持し、プラットフォーム経済発展規律を尊重し、今一歩プラットフォーム経済の重要作用を発揮させ、公平競争、イノベーション発展、開放共有、安全調和のプラットフォーム経済新秩序を確立し、プラットフォーム企業がさらに活力を漲らせ、オンライン消費がさらに手軽かつ高品質となることを実現し、プラットフォーム経済をさらに秩序だって繫栄させると指摘しています。

本会議に市場総局に加え、 中央サイバーセキュリティ・情報化委員会弁公室(網信弁)が参加していることは要注目です。同委員会・同弁公室は「資本による世論操縦を防止」することを主張した党中央宣伝部と直結した組織です(2021年2月18日付日本経済新聞経済教室参照)。2021年1月7日、中国消費者協会がネット上のAI等使用による消費者権益侵害に警鐘を鳴らした座談会にも同弁公室より担当官が出席しており、かつ3月12日制定・22日発布の「ネットアプリ必要個人情報範囲規定」でも筆頭に名前が挙がっています。この間、同弁公室が中心となり、党支配の維持のため、プラットフォーム企業によるメディア支配、AI・アルゴリズム等の技術的手段の使用による消費者選択の歪曲、個人情報の不必要な収集利用に歯止めをかけようと政策形成やルール整備を進めてきたと考えられます。

上記で紹介した行政指導会の記事は、今まで私が見てきた市場総局の文書や会議(例えば、同じプラットフォーム企業に対する2019年11月5日指導会及び2020年7月の座談会参照)とはまるで言葉遣いが違っており、激しい非難の言葉や政治色・共産党色の強いスローガンが列挙されており大変驚きましたが、本会議も上記の共産党組織が主導していると考えると大変合点がいきます。

本会議での「5つの厳格な防止」と「5つの確保」が一体何を意味しているのかが非常に重要です。

このうち「2.独占の秩序喪失を厳格に防止し、市場公平競争を確保する。」と「3.技術による封殺を厳しく防止し、業界のイノベーション発展を確保する。」は、独占禁止法違反処分を受けたアリババに対する行政指導書(2021年4月10日)でも要求している独禁法遵守確保等に対応しているので、比較的理解しやすいです。また、「 5.システム閉鎖を厳しく防止し、エコシステムの開放・共有を確保する。 」に対応する内容も、アリババ行政指導書に見えます。

「14. 法に従ってプラットフォーム内のデータ及び決済、アプリ等のリソースポートの開放度を強化し、ユーザーの選択権を十分尊重し、正当な理由なくして取引を拒絶してはならず、PF間相互接続・相互操作を促進する。」

これはTモール等アリババのエコシステムではアリペイしか決済で使えず、テンセントのエコシステムではウィーチャットしか使えないといった、相互に閉鎖的なシステムを開放度の高い、ユーザーの自由選択が可能なシステムに変革しようという非常に競争促進的かつユーザーフレンドリーな要請と評価できます。

「4.ルール・アルゴリズムの濫用を厳しく防止し、各当事者の合法権益を確保する。」についても、アリババ行政指導書に対応する下記の内容が盛り込まれています。

「4. PF内部のエコシステム統治を強化し、サービス合意、PF運営、資源管理、トラフィック分配等取引ルールを絶えず改善し、検索・配列等のアルゴリズムを客観的かつ中立に設定、データ資源を公平公正に使用し、PF統治ルールの公開性と透明性を向上し、個人情報及びプライバシーを法に従って保護する。」

この内容は、純粋に消費者やプラットフォーム内事業者(出店者等)の権利保護を狙っているように見えますが、プラットフォーム企業による世論や消費者行動の把握・コントロールを困難にするという意味で、党支配の維持にも貢献する指導内容だと考えられます。

最後に残った「 1.資本の無秩序な拡張を厳格に防止し、経済社会安全を確保する。 」がやや意味不明です。アリババに対するメディア資本売却が命ぜられるとのウォールストリートジャーナルの観測記事を受け、アリババ処分と同時に、これが自主的改善計画のような形で事実上、命ぜられるのではとの見立てをしていましたが、アリババ行政指導書では一見して、これに対応する内容が見当たりませんでした(4月10日投稿)。ただ、今回の指導内容の1は、或いはメディア資本の売却を含意しているのかもしれません。

やはりアリババ行政指導書を受けた改善計画(4月30日までに提出)と今回の指導を受けた改善策(5月13日までに提出・公表)に具体的にどのような措置が盛り込まれるのか要注目です。

行政指導会の紹介記事の最後の方に、「プラットフォーム企業の違法行為に対する規律・統治の強化は、決して国家によるプラットフォーム経済を支持し奨励する態度の変更を意味せず、『2つのいささかも揺るがせにしない』原則を堅持し、プラットフォーム経済発展規律を尊重」云々のくだりは、ルールを守ってもらうだけで、今後も、プラットフォーム経済を支持奨励する、民営企業の所有権をないがしろにはしないというメッセージです(この「2つのいささかも揺るがせしない」原則(=公有制・非公有制のいずれも同等に保護する)は、2020年12月26日の人民銀行のアント面談に関する記事でも出てきたものですし、2021年の3月の政府活動報告でも、「独占禁止を強化し、資本の無秩序な拡張を防止する」と明記された段落の上の方でしっかり言及されていました)。アリババの処分後のウェイボーでの手紙でも「発展の歴史における新たな出発点」とあり、当局との折り合いがついて、今後も事業を継続発展させていくという前向きなメッセージが込められていましたが、今回の当局側の表現も、アリババのメッセージに呼応する内容といえます。これで国有化とか接収といった憶測は、ほぼ否定されたと見てよいでしょう。

アリババ行政指導書によりアリババが多岐にわたる改善計画を提出し、社会監督の対象となることが判明しましたが、同様の改善計画を、例えば、現在独禁法調査の対象となっているテンセントにも求めるだろうと予測していました。しかし、今回の行政指導により、中国当局が、個別企業に関する調査を1つ1つ積み重ね、処分に当たって行政指導をするという悠長なアプローチでなく、アリババ事件での超高額制裁金の威嚇の下、業界全体に指導することで、一気にプラットフォーム経済秩序を作り替えてしまうことを考えていることが分りました。完全に予想のななめ大分上に行かれた印象です。

カテゴリー: 独占禁止法, 中国 | タグ: , , , , , , | 6件のコメント

アリババ集団に対し182億元(約3044億円)の行政制裁金賦課及び行政指導

2021年4月10日午前9時(日本時間10時)、国家市場監督管理総局(以下「市場総局」という。)は、2020年年末より調査していたアリババ集団による出店者に対する競合プラットフォームへの出店制限(いわゆる「二選一」)について、市場支配的地位の濫用の1類型である独占禁止法17条1項4号の取引先限定(日本独禁法上の「排他条件付取引」)に該当すると認定し、違法行為の停止を命ずるとともに、同集団の2019年度の中国域内売上高4557.12億元の4%に当たる182.28億元(1元=16.7円のレート換算で約3044億円)の行政制裁金を課しました。これに加えて、二選一を超える非常にさまざまな事項について、行政指導も行っています。

行政処分決定書行政指導書(2021年4月6日付)両者を掲載した公告プレスリリース

1)2008年8月中国独禁法施行後、最高額の行政制裁金

2015年の米半導体メーカー・クアルコムの特許ライセンス慣行に関する行政処分決定では、年間売上高の8%にあたる60億8800万元(約1010億円)の行政制裁金が課され、従来これが1件当たり及び1社当たりいずれについても、ダントツの最高金額でした。本件での約182億元(3000億円超)の行政制裁金は、この記録を、ちょうどこの3倍の額まで、あっさりと引き上げてしまいました。

私もインタヴューで関与した高口氏のプレジデントオンライン記事(2021年3月23日)では、「アリババの2020年会計年度(2019年4月~2020年3月)の売上高は5097億1100万元(約8兆5100億円)。最大でその10%、約8500億円もの制裁金が課されることになる」と予測を立てていましたが、処分は4%に収まりました。

同記事では引用されていませんが、同インタヴュー時には、今回のアリババの違法行為は長期間行われているため、高率になる可能性もあるが、クアルコムが調査に協力的でない事情も加味されて8%だったと考えられるのに対し、アリババは2020年12月24日に開始された当局の調査に恭順の意を示し、協力している様子(阿里巴巴集团2020年12月份季度业绩发布电话会记录稿2021年2月2日)なので、もう少し低い率になるかもしれないと回答していました。実際に、処分決定書23頁では、法49条規定の「違法行為の性質、程度及び持続期間」に加え、アリババが当局の要求に従って、自ら深く調査し、違法行為を停止し、及び積極的に改善した等の要素を考慮したと説明されています。なお、持続期間は同頁に2015年以来と書かれているので、約5年間との認定です。

なお、法47条では、違法行為の停止命令、違法所得の没収及び行政制裁金と3つ併課が義務付けられているのですが、今回の決定では違法所得の没収が含まれていません。これはクアルコム事件決定にも見られた運用ですし、公正取引845号所収の2020年の運用状況に関する拙稿でも紹介したように、一貫性はないのですが、最近もこうした運用が見られます。

2)正式な行政指導書

今回の処分で特徴的なのは、処分決定書に加え、正式な行政指導書が公表されていることです。同指導書には、

1.自己の競争行為の全面的な規律

2.プラットフォーム企業主体としての責任の厳格な実施

3.企業内部コンプライアンス体制の改善

4.プラットフォーム内事業者及び消費者の合法権益の保護

5.積極的な公平競争の維持とイノベーション発展の促進

の5つの大項目に分類された、計16の小項目が列挙されており、4月30日までに改善計画を市場総局に提出すること、今後3年間、年末までにコンプライアンス報告を提出することが要求されるとともに、自主的に同コンプライアンス状況を社会に公開し、社会監督を受けることを提案しています。

この行政指導書は、行政処分決定書や同指導書冒頭において、行政処分法(正式名「行政処罰法」)「処分と教育の結合を堅持する」原則に基づくものであると説明されています(同法5条にこの文言があります)。

中国独禁法の行政処分と同時に、事実上の行政指導が行われた例は、上記のクアルコム事件も含めいくつか挙げることができますが、今回のように正式な行政指導書が公表されたのは私が知る限り初めてです(もしかすると地方レベルで例があったかもしれません。ご存じの方は是非ご一報ください)。

上記のように指導の項目が多岐にわたり、かつ、競争事業者、プラットフォーム内事業者、消費者と利害関係者が多種多様であるため、指導内容を公開し、社会監督を受けさせるのが適切という考えに基づいているのでは、と推測します。

上記のプレジデントオンラインの記事中では、アリババが中国版ツイッター「ウェイボー」やサウスチャイナ・モーニング・ポストなどのメディア資本の売却を命ぜられるというウォールストリートジャーナルの観測記事(2021年3月15日)を受けて、「『二選一』とはまったく関係のない、メディア事業の売却が、アリババの“自主的”な改善計画の一項目となることは充分に考えられる」と指摘しました。処分とは別に自主的な改善計画が提出させられるという点は予測通りでしたが、本日公表された行政指導書の項目には、メディア資本売却に対応するものは一見したところ見当たらないようです。この点については、アリババ側の処分を受けた動き、特に改善計画の内容等に注意を払っていこうと思います。

アリババ側の現時点での公式な反応としては、9時台に公告、さらに11時台に「顧客及び社会公衆への手紙」が、ウエイボーに掲載されています。いずれも処分を「誠実に受け入れ、断固として服従する」というものですが、後者の手紙の方では、「本日は、アリババの発展の歴史において重要な一日で、これを新たな起点に」するといった将来展望にも触れています(本段落、当日追加)。

以上、速報するとともに、一見して気づいた点を解説しました。処分決定書や行政指導書のより詳しい紹介や分析は、また後日に。

来週から始まる前期の大学院「中国独占禁止法」ゼミでは、プラットフォーム分野の規制を中心に取り上げる予定でしたが、最新かつ重要な教材ができました。

カテゴリー: 独占禁止法, 中国 | タグ: , , , , , , , , , | 2件のコメント

アプライドマテリアルズによるKOKUSAI ELECTRIC(旧日立製作所系)買収断念(日経新聞記事コメント掲載)

国際的なM&A、中国リスク浮き彫り アプライド買収断念」日本経済新聞2021年3月30日朝刊17頁に私のコメントが掲載されました。関連記事として「米アプライド、旧日立系買収を断念 中国の承認下りず」同1頁もご覧ください。

中国独占禁止法による企業結合審査の長期化の結果、M&Aの実施が遅延する例や本件のように断念する例が少なからずあります。上記の記事でも、米国クアルコムによるオランダNXPセミコンダクターズの買収案件が、米中貿易摩擦の真っただ中であった2018年7月、中国独禁当局の承認を得られず破談した例が紹介されています。

これ以外にも、条件付承認のケースですが、NVIDIAによるメラノックス買収(GPU加速器、ネットワーク相互接続機器、vEthernet)(2020/4/16決定)では、当事会社により届出撤回及び再届出が行われており、問題解消措置に関する当局との交渉が長期化したと推測されます。

ただ、コメント中の「可能性がある」という表現でも分かるように、本件審査や断念に至った経緯については関連情報が非常に少なく、「産業政策的配慮に基づく介入」との推測はあくまでも周辺情報に基づくものです。

なお、類似の指摘は、拙稿「連載講座 中国独占禁止法」公正取引808号(2018年2月)38-39頁や同「中国における競争政策の最新動向」公正取引845号(2021年3月)21頁でもしています。

 

 

カテゴリー: 独占禁止法, 中国 | タグ: , , , , , | 1件のコメント

公正取引845号(2021年3月)「中国における競争政策の最新動向」寄稿等

ちょっと遅いご報告となりますが、公正取引845号(2021年3月)16₋25頁に「中国における競争政策の最新動向ー2020年の独占禁止法運用状況と今後の展望ー」を寄稿しました。大部分は、2020年中の中国独禁法の各行為類型ごとの処分の傾向を論じたものですが、最後の方で、2020年末来のプラットフォーム事業者に対する法執行の強化と2021年2月公表のガイドラインのポイントについても紹介しています。

これ以外に以下の記事で私のコメントが紹介されています。

高口康太「“聖域”はなぜ崩れたのか 中国『アリババ規制』の真意Wedge33巻4号(2021年4月号)72₋74頁(2021年4月2日、記事への直リンク追加)

高口康太「『世論を操作していいのは政府だけ』中国共産党がアリババを追い詰めるすごい理由 制裁金は約8500億円になる恐れも」 PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) 2021年3月23日

3月の全人代その他の関連の動き、紹介できていませんので、別稿でまとめて紹介したいと思っています。

 

カテゴリー: 独占禁止法, 中国 | タグ: , , , , , , , , , , , , , | コメントをどうぞ

日経新聞経済教室「中国の産業政策を読む(中)競争政策、巨大ITに照準」寄稿

経済教室「中国の産業政策を読む(中)競争政策、巨大ITに照準」日本経済新聞2021年2月18日朝刊27頁を寄稿しました。

 1970年代末の改革開放開始から直近の巨大IT企業に対する独禁法執行の強化まで約40年間の競争政策の変化を3000字に凝縮したため、いろいろ説明不足であり、単純化が過ぎる箇所が多いことについては、どうかご容赦ください。本ブログでは字数を気にせずダラダラと書いておりますが、今回、趣旨を伝えることのできる、ぎりぎりの文字数と表現を追求する作業を久しぶりに経験しました。

 本稿では、社会主義基本経済制度や社会主義市場経済体制を採用する中国において、競争政策が担う「(国有、民営及び外資の混在する)混合市場で競争に秩序をもたらし公平を確保する極めて重要かつ繊細な役割」に焦点を当てて、かつ直近の巨大IT企業に対する独禁法執行強化(「聖域」から「主戦場」へ)の背景を読み解くことを目指しました。短文でそうした欲張りをしたため、1978年末の改革開放開始以降、2008年の独禁法施行後も一貫して続く、競争政策の「通奏低音」とも言うべき「統一市場の形成(=地方保護主義の打破)」を捨象せざるを得ませんでした。

それとも通ずる点として、独禁法の規制対象となる行為類型として「行政権力の濫用による競争排除又は制限(いわゆる「行政独占」)」について字数を割くことができませんでした。第三者による事後規制としての行政独占規制に対する自己事前規制としての公平競争審査制度という対比と連続性も本来説明する必要があったのですが、公平競争審査制度にちょっとだけ触れるのがやっとでした。

さらに、今回、巨大IT規制に対する党・政府の指導部からの要請に着目したため、競争者や消費者といった「下からの要請」の強さについては、(「競争者や消費者の不満が高まった」、「消費者の不満に応えた」といった表現で若干触れましたが)あまりクローズアップできていません。この点は、党・政府が消費者の不満を軽視しているという趣旨ではなく、むしろ独禁法執行のもう1つの「通奏低音」としてインフレ対策、民生への負担回避が重要な焦点となっていると認識しており、「下からの要請」と「上からの要請」ががっちりかみ合ったのが今回の巨大IT規制の強化とうまくまとめたかったのですが、字数の都合でその辺り書き切れなかったとご理解頂ければありがたいです。

党・政府指導部における独禁法に対する認識の変化を論じた最後の部分では、仮説の上に仮説を継ぎ足す大変危うい議論を展開しています。その中で、「独占禁止の強化と資本の無秩序な拡張の防止」のスローガンが中央経済工作会議だけでなく、中央政治局会議でも取り上げられたことを説明する論理ピースとして、2020年4月のアリババ副総裁のスキャンダルをもみ消すため、出資先である微博(ウェイボ)(中国版ツイッター)が関連情報をもみ消した一件とその後の党中央宣伝部副部長の「資本の世論操縦の防止が必要」との発言を紹介しました。「資本の世論操縦の防止」と「資本の無秩序な拡張の防止」が呼応していると理解しました。本稿では、2020年半ば頃のこれらの動向の結果、党・政府と巨大IT企業の間の従来の協力関係が一部破綻したと読み解きましたが、正直、破綻の兆候はもっと前からあったので、2020年半ばは、各方面での潮流が1つの流れとして合流して、政治力学が大きく動いた時期と捉えた方がより正確かもしれません。ここも字数の都合で、丁寧な記述ができなかった箇所です。

本稿中で触れた資料やニュースについては本ブログで既報のものもありますが、以下、(一部字数の都合で触れられなかったものも含め)参考資料としてリンクを掲載しておきます。

・WTO加盟後の外資プレゼンス拡大に対する懸念が独禁法制定を促した経緯(川島富士雄「中国独占禁止法2006年草案の選択と今後の課題-改革と開放の現段階-」 国際開発研究フォーラム34号(2007)

・巨大IT企業が中国独禁法執行の「聖域」と目されることになった背景(川島富士雄「中国における電子商取引分野に関する法規制ー独占禁止法、反不正当競争法及び電子商取引法を中心にー」独立行政法人経済産業研究所ディスカッションペーパー20-J-22(2020)

・2016年6月「市場システム建設における公平競争審査制度の設立に関する国務院意見

・2019年10月、中国共産党第19期中央委員会第4全体会議(四中全会)決定

・2020年4月、アリババ副総裁のスキャンダルをもみ消すため、出資先である微博(ウェイボ)(中国版ツイッター)が関連情報を削除した一件と、それに対する2020年6月、国家インターネット情報弁公室処分

・(本稿中、字数の都合で掲載できなかったが)2020年8月1日付のロイター記事(「人民銀行がアリババ及びテンセントに対する独禁法調査を要請」と報道)

・2020年11月19日、中国共産党中央宣伝部副部長の「資本の世論操縦の防止が必要」との発言同発言に関する沈陽・清華大学教授ら解説(環球時報2020年11月23日)。

・2020年12月1日、国家ネットワーク情報弁公室「モバイルインターネットアプリ個人情報必要範囲案」(各分野のアプリで収集が必要となる個人情報の範囲を限定列挙)

・2021年1月7日、中国消費者協会、「ネットワーク消費分野でのアルゴリズム利用と消費者保護座談会」を開催し、アルゴリズム仕様に対する有効規制の必要性を訴える声明発表。同座談会には党中央サイバーセキュリティ弁公室(=国家ネットワーク情報弁公室)秘書局からも出席。

・2021年1月21日、人民銀行「非銀行決済機構条例案」(市場総局に対し電子決済市場での市場支配的地位の認定や同濫用行為の停止等の要請・提案する権限を人民銀行に付与)

 

カテゴリー: 独占禁止法, 金融市場, 中国 | タグ: , , , , , , , , , , , , | 1件のコメント

国家市場監督管理総局、唯品会の反不正当競争法違反処分決定書公表

2021年2月8日、国家市場監督管理総局(以下「市場総局」という。)は、既に唯品会の反不正当競争法違反に対し300万元(約4875万円)の行政制裁金を課す処分を下した旨、公表されておりましたが、本日2月10日、同処分決定書が公表されました。

まず、前提事実として、唯品会(Vipshop)はアリババのTモール、京東(JD.com)、(ピンドゥオドゥオ)と同様、中国で有力なネットショッピングモールです。拼多多に抜かれて現在、業界第4位のようです。英語名称に現れていますが、競合他社よりもブランド品の割引販売に重心を置いた戦略をとっています。

2月8日の公表文及び同10日の本件処分決定書は、2020年8~12月、当事会社が競争上の優位と取引機会を獲得するため、パトロールシステム(原文:巡检系统)を開発・使用し、同社及びその他の企業に同時に出品販売している事業者の情報を獲得し、供給者プラットフォームシステム、スマート化ネットワークエンジン、オペレーションミドルオフィス(原文:运营中台)等が提供する技術手段を利用して、ユーザー選択への影響、データトラフィックの制限、ブロック、商品取り下げ等の方式を通じ、ブランド事業者の消費者の注目、データトラフィック及び取引機会を減少し、ブランド事業者の販売ルートを制限し、ブランド事業者及びその他の事業者の提供するネットワーク商品及びサービスの正常な運行を妨害又は破壊し、自由意思、平等、公平、信義誠実の原則に反し、公平競争市場秩序をかく乱した、と事実認定をしています。

以上について、本件処分決定書は、関連現場記録、事情聴取記録、当事者及び関連会社が提供した営業許可証、販売契約、やり取りしたメール記録、サーバー操作日誌、関連販売決算記録、関連通報資料、関連電子データ等の証拠によって証明されていると紹介しています。

市場総局は、当事会社の上記の行為は、反不正当競争法第12条第1項第4号の「事業者は、技術手段を利用して、ユーザーの選択へ影響を及ぼす、又はその他の方式を通じて、次のその他の事業者の合法的に提供するネットワーク産品又はサービスの正常な運行を妨害又は破壊する次の行為を実施してはならない。(中略)(四)その他の事業者の合法的に提供するネットワーク産品又はサービスの正常な運行を妨害又は破壊するその他の行為」の規定に違反すると認定した。

結論として、市場総局は、反不正当競争法第24条の「事業者が第12条の規定に違反し、その他の事業者の合法的に提供するネットワーク産品又はサービスの正常な運行を妨害又は破壊した場合は、監督検査部門は違法行為の停止を命じ、10万元以上50万元以下の行政制裁金を賦課する。情状が厳重である場合は、50万元以上300万元以下の行政制裁金を課す」との規定に基づき、300万元の行政制裁金を課しています。

以上の事案紹介・決定内容に関しコメントです。

1.本件は2020年12月24日に立入検査が行われたアリババの競争ネットショッピングモールの排除行為(いわゆる「二者択一」)と、ほぼ同様の競争者排除行為が行われていたと見られます。ただ、アリババの調査は独占禁止法違反に関するものであったのに対し、本件は反不正当競争法違反を理由に処分が下されています。

2020年9月3日、本件行為の直接の被害を受けた競争事業者(愛庫存)は、公式ウェブサイトでの声明で、唯品会による同社への出品者に対する二者択一強制行為が反不正当競争法以外にも電子商取引法、独禁法等に違反すると抗議し、同行為の即刻停止を要求しました。さらに、同月14日、同社は11日、市場総局らに対し、唯品会の不正競争行為の調査開始を要求する実名書簡を送付したと発表しました。同書簡では、上記の声明と同様、各種法令違反を主張したものと考えられますが、2021年1月14日、市場総局が唯品会に対する調査を立件した旨公表した際には、すでに不正当競争行為に関する調査に限定されていました。これは予備的な調査の結果、同法第12条の意味での「技術手段」が用いられた事案であること、唯品会の市場シェアがさほど大きなものでなかったこと等から、反不正当競争法違反調査が選択され、最終的にも同法違反で処分されたと見ることができます。

2.反不正当競争法第12条は、2017年同法改正により導入され、2018年1月1日施行した規定です。同法第12条の初期の処分例として、浙江省海塩県ネット出前事業者技術的妨害事件(2018年)等があります(川島・2020年4月RIETI・DP20-21頁参照)。同処分例では20万元の制裁金が課されています。これに対して、本件では15倍かつ第24条における上限の300万元が課されています。上限額が適用されたのは、おそらく本件が初めてだと思われます。

市場総局は、当事会社が競争者排除の目的で、わざわざパトロールシステムを開発・使用し、それにより得られた出店事業者の情報に基づいて、供給者プラットフォームシステム、スマート化ネットワークエンジン、オペレーションミドルオフィス等の多くの技術手段を利用して、かつユーザー選択への影響、データトラフィックの制限、ブロック、商品取り下げ等の多くの方式で競争モールにも出品するブランド事業者の商品提供を妨害しており、組織的かつ悪質な違法行為に従事した点を重視して、情状が極めて重大であると考え、上限額での処分に踏み切ったものと推測されます。

3.上記の通り、2021年1月14日、市場総局は近日、唯品会に対し調査を立件した旨公表しました。その時点から、1か月に満たないスピード調査で、本件処分に至っています。これは、上記でも一部抜粋した第12条が、1)技術手段を利用した、2)消費者の選択に影響を及ぼす、又はその他の方式を通じた、2)その他の事業者が合法的に提供するネットワーク産品・サービスの正常な運行の妨害又は破壊行為、の3つの要件を満たせば、市場支配的地位の認定(及びその前提として関連市場の画定)のステップを踏むことなく、違法判断ができる規定であることが大きく寄与していると考えられます。これらの3つの要件は、証拠さえしっかり出てくれば比較的容易に認定することが可能で、ほとんど争いの余地のない性質の要件だと考えられます(唯一「正常な運行」を妨害又は破壊したかが価値判断の含まれる要件でしょうか)。

これに対し、独禁法上の市場支配的地位の濫用と認定する場合には、1)ここで問題となっている関連市場はどの範囲か(ネットショッピングモール全体か、ブランド品モール限定か等)画定し、2)市場支配的地位を有するか、3)当事者の行為が第17条第1項の各号のいずれかに該当するか(例えば、第3号 取引限定)、4)競争排除又は制限効果(第6条)があるか、5)正当な事由がないか、順に認定する必要が生じます。本件の唯品会について独禁法違反を認定する場合、特に関連市場の画定と市場支配的地位の認定が大きな争点になるように思われます。

本件で調査が迅速に終結した背景として、もう1つ2020年12月中旬の中国共産党政治局会議及び同中央経済工作会議での「独占禁止の強化と資本の無秩序な拡張の防止」の重点任務化があるかもしれません(後者の会議について2020年12月19日投稿)。ここでは、独占禁止法だけでなく、反不正当競争防止法の執行強化も併せて強調されていることに注意喚起しておきたいと思います。逆に、こうした指導部から法執行の強い要請があったからこそ、(実績作りのため?)迅速に調査処分が可能な反不正当競争法違反調査が選択されたと見ることも可能かもしれません。

4.本件ではIT分野の事件だけに、事情聴取記録、販売契約等以外にも、やり取りしたメール記録、サーバー操作日誌、関連電子データ等の記録が証拠として挙げられています。特に「関連電子データ」の中に、パトロールシステムやスマート化ネットワークエンジンのAIやアルゴリズムが含まれているのかが注目されます。

2021年2月7日に制定・公表された「プラットフォーム経済分野に関する独占禁止ガイドライン」(2021年2月8日投稿参照)では、いわゆるアルゴリズムカルテル以外にも、アルゴリズムを用いた再販売価格維持、排他条件付取引、取引拒絶などが独禁法規制の対象となりうることを明確にしています。

本件は独禁法に基づく処分例ではありませんが、同ガイドラインで示された方針が、事実上、1日以内で適用された事例と見てもよいように思います。アリババ調査も含め今後IT企業関連の事件では、本件のようにAIを含む技術手段を使った違反行為が認定され、証拠の1つとしてアルゴリズムが挙げられることが日常茶飯事となる予感がします。

5.なお、唯品会は、2020年12月24日、Tモールや京東とともに、価格法違反(二重価格表示)でも処分(上限額の50万元の制裁金賦課)を受けています(2020年12月30日投稿)。わずか1月半の短期間に2度も市場総局の(しかもそれぞれ上限額の)処分を受けるとは企業イメージへのダメージはかなり深刻ではないかと思います。

以上、本件は2021年1月14日の調査立件の公表時にすぐにも投稿したいと思っていたものですが、こんなに早く処分決定が下り、すぐにまとめて紹介ができると思いもよりませんでした。中国独禁法関連の動き、非常に展開が速いです。

カテゴリー: 独占禁止法, 日本, 不正当競争禁止法, 中国 | タグ: , , , , , , | コメントをどうぞ

独占禁止委員会「プラットフォーム経済分野に関する独占禁止ガイドライン」公表

2021年2月7日、国務院独占禁止委員会「プラットフォーム経済分野に関する独占禁止ガイドラン」が制定・公表されました(即日実施。発布文解読記者Q&A解読図解)。これにともない、関連法規・ガイドラインのページも更新しました。

2020年11月10日の意見募集稿の公表から、3か月以内のスピード制定でした(その背景事情については後述)。原案から大きく内容が変更されているわけではないですが、以下のような微調整が行われています。

・意見募集稿公表後の12月中旬の中央政治局会議や中央経済工作会議で提起された「資本の無秩序な拡張の防止」等の文言を反映(第3条 基本原則)。

・全体として、既存の実施規定への言及を追加(第2章冒頭、第10条 リニエンシー制度、第3章冒頭、第20条等)。

・関連商品市場画定時の考慮要因として、ロックイン効果、スイッチングコストを追加(第4条 関連市場の画定)。

・市場支配的地位の認定に当たって、市場画定なしで競争排除又は制限の直接証拠から認定することが可能との記述を削除(第4条 関連市場の画定)。

・最恵国待遇条項の概念を具体的に説明(第7条 垂直的独占合意)。

・単に競争者とだけあったものを「プラットフォーム内競争者」と明確化(第8条 ハブアンドスポーク合意)。

・市場支配的地位の認定や企業結合の影響審査における考慮要因の1つとして、ユーザーベースでなくアクティブユーザーベースに変更(第11条及び第20条)。

・コスト割れ販売の行為者を、プラットフォーム事業者からプラットフォーム経済分野事業者に拡大(第13条 コスト割れ販売)。

・正当な理由に「合理的な期間内の新ユーザーの誘引」等を追加(第13条 コスト割れ販売)。

・データが不可欠施設を構成するか否かの認定に当たっての考慮要因を削除(第14条 取引拒絶)。

・「ユーザー情報の強制的収集」を「不必要なユーザー情報の強制的収集」に変更(第16条 抱き合わせ販売又は不合理な取引条件付加)。

・ビッグデータに基づく新旧利用者の差別(いわゆる「ビッグデータ殺熟」)への明示的な言及の削除(第17条 差別待遇)。

・プラットフォーム経済分野での(企業結合審査届出基準上の)売上高計算が、ビジネスモデルの差だけでなく、業界慣行、費用徴収方式、プラットフォーム事業者の機能等の差によって変わることを追加(第18条 届出基準)。

・企業結合に対する行為的問題解消措置として、プラットフォームルール又はアルゴリズムの修正に加え、インターフェイスの約束等を追加(第21条 救済措置)。

・本ガイドラインの解釈は独占禁止委員会によるとの附則を追加(附則)。

以上です。

ほとんどがテクニカルな変更ですが、この中でも、ビッグデータに基づく新旧利用者の差別(いわゆる「ビッグデータ殺熟」)への明示的な言及の削除(第17条 差別待遇)が注目されます。本ガイドラインに関する記者Q&Aでは、独占禁止委員会弁公室責任者(=市場総局の責任者)は、特にビッグデータ殺熟に関する質問に答えて、「市場支配的地位の濫用を構成しうることを明確にした」と述べていて、また発布文には、「社会各方面の意見が比較的多い「二選一」、「ビッグデータ殺熟」等のホットイシューに対し、ガイドラインは、プラットフォーム経済分野での市場支配的地位の濫用の認定は、通常、まず関連市場を画定し、事業者が関連市場において支配的地位を有するか分析し、さらに個別事案状況に基づいて市場支配的地位の濫用を構成するか分析することを明確にしている」との説明があります。これは一見すると「ビッグデータ殺熟」も規制対象に加えたと言っているようにも見えますが、逆に、本ガイドラインは、世間で話題になっていても、通常の独禁法の手順で違法かどうか判断すると宣言していると理解すべきなのかもしれません。ガイドライン第17条第3項第2号には「新ユーザーに対する合理的期間内の優待活動」が正当な事由の1つとして挙げられています。これを上記の明示的な削除と合わせ読むと、制定版のガイドラインは、むしろ新旧利用者の差別に対して規制することに消極的な姿勢を示しているように見えます。ただ、第17条第2項には、いくつかの要因とともに取引履歴も、その差異が取引相手の条件が同一かどうかの認定に影響を与えないとされており、新旧利用者が同一の条件の取引相手と判断される余地はあるようです。第17条第2項の取引履歴への言及と同条第3項第2号の「新ユーザーに対する合理的期間内の優待活動」は緊張関係に立つと思うのですが、その点がどう運用されるのか今後の実務を待たざるを得ません(2021年2月9日、第17条第2項の位置づけに誤解があったので修正しました)。

もう一点、「市場支配的地位の認定に当たって、市場画定なしで競争排除又は制限の直接証拠から認定することが可能との記述を削除(第4条 関連市場の画定)」と「データが不可欠施設を構成するか否かの認定に当たっての考慮要因を削除(第14条 取引拒絶)」については、論争的な箇所は先送りにしたような印象があります。

つまり、本プラットフォーム経済分野ガイドラインは、党指導部の関心も強く、迅速に制定する必要があったところ、もめそうな箇所は落として、制定を優先したということではないかと憶測します。実際、本ガイドライン案よりも1~2か月前に意見募集稿が公表された域外コンプライアンス及び医薬原料の2つのガイドラインを飛び越えて、本ガイドラインが先に制定公表されています。

以上、速報的に分析してみました。

 

カテゴリー: 独占禁止法, 中国 | タグ: , , , , , , , , | コメントをどうぞ