上海市物価局、GM販売子会社に対し約2億元の制裁金

明けましておめでとうございます。昨年末の2016年12月19日、上海市物価局は上汽通用汽車有限公司(上海汽車とGMの合弁会社)の販売子会社による再販売価格維持に関し、約2億元の制裁金を課す決定を下しました(同年12月23日公表)。

自動車の再販売価格維持に関しては、既に2014年にアウディ、ベンツ、クライスラーが、また2015年に東風日産が、それぞれ行政制裁金を課されています。上海市物価局の案件としては、クライスラーに次いで2件目となります。自動車産業は、国家発展改革委員会が、特に独禁法ガイドライン案(2016年3月23日に意見募集稿を公開、再販売価格維持についても言及)を起草中で、法運用の重点領域と位置づけられています。

また、自動車以外でも、白酒、粉ミルク、眼鏡用レンズ及びコンタクトレンズ家電医療機器といった商品の再販売価格維持に制裁金が課されています。いずれも国民生活直結型の商品である点が注目です。

本件処分の正式公表前、12月14日付けChina Dailyが「近々、米国自動車会社を独禁法違反で処罰する予定」との記事(国家発展改革委員会価格監督検査及び独占禁止局の張漢東局長への単独インタヴュー)を掲載しました。そのタイミングと米国と国名を明示したやり方から、12月2日、トランプ次期大統領が蔡英文総統と電話協議を行ったことに対する牽制ではとの報道も見られました(「米社メーカーに制裁示唆 トランプ政策中国が瀬踏み」日本経済新聞2016年12月16日朝刊5面、「上海市、GMに罰金34億円 独禁法違反で 米中が報復合戦」日本経済新聞2016年12月24日朝刊7面)。

しかし、本件処罰決定書によれば、2016年4月25日から同年11月18日まで調査したとあるため、蔡総統との電話協議はおろか、トランプ次期大統領の当選判明(2016年11月9日)の半年以上前から調査した結果が、このタイミングで出たに過ぎません。さらに、上記China Dailyの取材を受けた張局長と同じ価格監督検査及び独占禁止局の蘆延純副局長は、すでに2016年11月26日時点で、アウディ、ベンツ、クライスラー、東風日産らに加え、年末までにもう1社処罰するとの見通しを公言していましたし、実際、行政処罰事前告知書が当事会社に送達されたのは同年11月28日です。よって、本件処罰自体は、上記の中国独禁法運用の長期的文脈の中で理解すべきであり、決して短期的な対米牽制的運用とはいえません。

他方、China Dailyの上記記事は、一面のトランプ次期大統領の記事のすぐ横に配置され、米国の自動車メーカーとあえて名指しで予告しており、さらに、その時点では英語版の新聞だけで報道されたとのことですので、トランプ次期大統領に対する牽制手段として掲載されたことはほぼ明らかです。本来、通常の独禁法運用であったに過ぎない処分が、中国政府内部のハイレベルの方針を受け、対米牽制のメッセージとして使われたと理解するのが妥当なところでしょうか。

このような形で外交上の牽制手段として使ってしまうと、中国独禁法はやっぱり内外差別的に、不公平に運用されているとのイメージが固定化されてしまうのではと懸念します。

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工商総局、テトラパックの市場支配的地位濫用に対し約6.7億元(約106億円)の制裁金

本日、夜のニュース番組を見ていたら、「工商総局がテトラパック(中国名「利楽」)に対し・・・」と出たので、慌てて工商総局のウェブサイトを確認したところ、出ていました。

工商总局依法对利乐滥用市场支配地位案作出行政处罚

竞争执法公告2016年10号 利乐滥用市场支配地位案

テトラパックは、グローバル市場において、液体食品包装設備、技術サービス、包装材料の提供及び液体食品生産企業に対し生産ラインの設計提案を世界中で行う大型多国籍企業であるところ、第三者からの申告に基づき、2012年から4年余り、調査を行った結果、工商総局は以下のように認定しています。

1)2009~2013年の期間、テトラパックは中国大陸液体食品無菌紙パック設備市場(設備市場)、無菌紙パック設備の技術サービス市場(技術サービス市場)及び無菌紙パック包装材料市場(包装材料市場)の3つの市場において、それぞれ市場支配的地位を有する。

2)同期間、テトラパックは、

①設備市場及び技術サービス市場における市場支配的地位を利用して、設備及び技術サービスの提供過程において、包装材料を抱き合わせした。

②包装材料市場における市場支配的地位を利用して、原料紙供給業者の競争者との協力の制限と原料紙供給業者の関連技術情報の使用制限を通じて、原料紙供給業者の競争者に対する原料紙の提供を妨害した。

③包装材料市場における市場支配的地位を利用して、遡及的な累計販売量リベート及び個別的な購入量目標リベート等競争を排除又は制限する忠誠度リベートを実施し、包装材料市場の公正競争を妨害した。

3)以上のテトラパックの行為は、中国独占禁止法第17条第1項第4号(正当な理由のない排他的取引等取引制限)、第5号(正当な理由のない抱き合わせ)及び第7号(その他市場支配的地位の濫用行為)に該当する。

工商総局は、テトラパックに対し、これらの3つの行為の停止を命ずるとともに、約6億6772万人民元(本日レート1元=15.875円換算で約106億円)の行政制裁金を課しています。

テトラパックは、それこそ中国独占禁止法ができる前から、中国市場で反競争的慣行をやっているとやり玉に挙げられていた企業で、実際に、法が施行されてから、工商総局が調査を行っていると報道されていました。ついこないだも、テトラパックとマイクロソフトは、どうなったんですかね、と知り合いと話したばかりだったので、とうとう来たかという印象です。

これまで工商総局は、外国の大企業相手の法執行決定例がなく、価格独占行為を担当する発展改革委に大分、水を空けられていたのですが、本件によりその存在感を一気に高めた印象です。

本件決定に関し、中国独禁法の適用について興味深い点として、1)忠誠度リベートは、17条1項4号の排他的取引ではなく、17条1項7号のその他の濫用行為に分類されている点、2)リベートは価格に関係するが、非価格独占行為を担当する工商総局が、他の非価格独占行為と一括して処理している点、を挙げることができます。

とりあえず本日は、速報のみとします。処分決定書(2016年11月9日付)は47頁に及び、これまで公表された行政処分決定書の中では最長だと思います。欧州のテトラパック事件、日本のインテル事件等との類似性を含め、追って詳しく分析しようと思います。

当日訂正注:上記3)で、17条1項4号(抱き合わせ)としていましたが、正しくは17条1項5号でしたので、訂正しました。また、下から2段落目の1)「忠誠度リベートは、17条1項4号の抱き合わせではなく」との箇所は、「忠誠度リベートは、17条1項4号の排他的取引ではなく」に訂正しました。

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神戸大学トップローヤーズ・プログラム(平成29年度出願者募集中)

神戸大学大学院法学研究科は平成28年度から高度専門法曹コース(トップローヤーズ・プログラム、「TLP」と略称)をスタートしました。主に若手中堅の弁護士向けの博士課程後期課程で、講師陣に神戸大学教員に加え、著名実務家(文字通り「トップローヤーズ」)に参画してもらっています。すでに、平成28年度、租税法、競争法、知的財産法及び国際商事仲裁の4つの専攻分野で開始し、講義も前期から始まっています。平成29年度は、労働法及び新興国法務の2つの専攻分野を新設し、また、知的財産法に新科目としてエンターテイメント法実務を加えます。

このうち新興国法務(2頁目と8頁目参照)では、1)中国法務Ⅰ、2)中国法務Ⅱ及び3)アジア法務の3科目を開講します。大江橋法律事務所の中国法務専門家アンダーソン・毛利・友常法律実務所の中国法務及びアジア法務専門家が講師陣に加わって下さいます。川島は、このうち、2)中国法務Ⅱで中国独占禁止法に関する講義を担当するほか、論文指導を担当します。

TLPの概要(専攻分野・科目・講師陣)や募集要項については以下をご参照ください。

神戸大学東京オフィス(JR有楽町駅すぐ)や神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ(阪急・梅田駅すぐ)での受講も可能です。

ご関心の方の問い合わせ及び出願をお待ちしております。

TLPウェブサイト  入試情報(問い合わせ先情報含む)
TLPの概要(平成29年度版)
平成29年度 高度専門法曹コース(トップローヤーズ・プログラム)学生募集要項

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(仮訳)世界貿易機関の貿易救済紛争裁決の執行に関する暫定規則

世界貿易機関の貿易救済紛争裁決の執行に関する暫定規則」(中華人民共和国商務部令2013年第2号、2013年7月29日公布)の日本語訳を投稿します(原文はこちら→商务部令2013年第2号 《执行世界贸易组织贸易救济争端裁决暂行规则》)。

国際商事法務で連載中の「WTOアンチダンピング等最新判例解説」のうち、2016年11月号に掲載予定のWTO紛争解決了解21.3条(c)に基づく仲裁に関する解説の中で、本規則を参照する必要があったため、このような形で仮訳を掲載しました。

すいません、中国独禁法とは関係ないし、2013年の規則なので速報性もないですが、上記のような事情でご容赦ください。

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10月より上海交通大学に滞在しています

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またもやブログの更新が久しぶりになってしまいました。この間、中国独禁法だけでなく私自身にも大きな動きがありました。まずは自分のことから。

すでに雑誌『公正取引』9月号の「国内だより」に書かせてもらったので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、この10月より上海交通大学凱原法学院に訪問学者(Visiting Scholar)として滞在しております。このブログでも登場した王先林先生の所属されている法学院で、競争法の研究センターとしてトップクラスです(同竞争法律与政策研究中心)。

すでに研究室で落ち着いて仕事ができるようになりましたが、こちらに入ってからスマホやWifiの契約、銀行口座開設等々、土台作りでてんやわんやでした。スマホは中国聯通、Wifiは中国電信、銀行は中国工商銀行といずれも国有会社が契約相手となり、中国に来ていることを体感させられます(2016年10月23日追記、そうそう初めて電気料金を払った先も国家電網=State Gridの上海市電力公司でした)。

10月中旬に入ると金木犀(中国語だと桂花)が香り始め、気温も寒すぎず暑すぎず過ごしやすく、とてもいい感じです。

滞在中は、今までとは違い、外側からでなく内側から見た中国独禁法についてレポートできればと思っています。

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工商総局、知的財産権濫用ガイドライン(意見募集稿)を公表

中国国家工商行政管理総局は、2016年2月4日、「知的財産権濫用に関する独占禁止法執行ガイドライン(国家工商総局第七稿)」を公表しました。意見募集期間が同月23日までとされています。

1月29日開催の公正取引委員会競争政策研究センター第39回公開セミナーでは、中国における「独占禁止法と知的財産権」問題に関する第一人者の王先林・上海交通大学特聘教授を講師にお迎えし、「中国独占禁止法による知的財産権濫用規制の新たな展開」と題して講演してもらいました。同講演に対する私のコメントの中では、2015年12月末の発展改革委知的財産権濫用ガイドライン案と2015年4月の工商総局知的財産権濫用規定の間でセーフハーバーに関し基準にズレがある点を指摘しました。工商総局側は2015年4月の知的財産権濫用規定において、水平協定の場合、合計市場シェアが20%以内、又は他に代替的技術が少なくとも4つ存在すること、垂直協定の場合、それぞれ30%以内、又は他に代替的技術が少なくとも3つ存在することという基準を設定していましたが(第5条)、今回公表された工商総局側の意見募集稿においても、この基準はそのまま残っています(第21条)。他方、発展改革委ガイドライン案では、水平協定の場合、合計市場シェアが15%以内、垂直協定の場合、それぞれ25%以内というセーフハーバー基準が設定されているため、今後、独占禁止委員会に両案が提出されて以降、調整が難航するのではと予測されます(王先生は工商総局案が妥当、既に制定済みの規定を変更するのは相当特別な理由が必要とのご意見でした。)。

1つ前の投稿で、3当局がそれぞれガイドラインを起草している状況についてお伝えしましたが、王先生のご講演によるとさらに国家知的財産権局も(独占禁止法執行機関ではないが)独自案を起草しているそうです。私のコメントの中で、2009年に工商総局主導で始まった起草作業が、なぜ2015年段階で3当局並行起草方式に変更されたのか質問したところ、当初は発展改革委も知的財産権濫用規制にあまり関心を持っていなかったが、最近は(クアルコム事件等もあり)その重要性に気づいて、自分に起草作業の主導権を与えろと主張したため、3当局並行起草方式に落ち着いたとのご説明でした。

商務部の意見募集稿がまだのようですので、今後、三者出揃った上で、独占禁止委員会において調整統合し、2016年6月頃の制定版公布を目指すようです。

取り急ぎ。

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発展改革委、知的財産権濫用に関する独占禁止ガイドライン(意見募集稿)を公表

中国国家発展改革委員会は、2015年12月31日、「知的財産権濫用に関する独占禁止ガイドライン(意見募集稿)」を公表しました。意見募集期間は2016年1月1日から同月20日までとなっています。

発展改革委が意見募集稿を公表しましたが、ガイドラインの名義は国務院独占禁止委員会となっています。また、「四. 知的財産権に係る企業結合」は省略されており、この部分は商務部が起草を担当していることが分かります。他方、2015年12月11日、国家工商行政管理総局側でも「知的財産権を濫用し競争を排除し、又は制限する行為の禁止に関する独占禁止ガイドライン(第六稿)」に関する座談会を開催したとあります。

発展改革委と工商総局のガイドライン案の名前が微妙にずれているため、これらが1つの動きなのか分かりにくいですが、2015年5月、独占禁止委員会弁公室の調整の下で、三執行当局がそれぞれ担当分野に関するガイドライン案の作成を開始し、2016年1月末までに同弁公室に原案を提出することになっているとのことです。発展改革委の1月20日意見募集締切というのも、この1月末に合わせた動きと言えます。よって、三執行当局すべてに適用される一本のガイドラインが独占禁止委員会名義で制定される運びです。なお、工商総局は、2015年5月の動きのずっと前の2009年に上記の名前のガイドライン案の起草作業に着手したので、現在もその名前で起草作業を継続しています。

以上も含め、中国における知的財産権濫用に関する独禁法規制の最新動向については、公正取引委員会競争政策研究センター(CPRC)が、1月29日(金)、上海交通大学の王先林教授を招へいして、公開セミナーを開催する予定です。王教授は、国務院独占禁止委員会専門家諮問委員会メンバーで、中国における「独占禁止法と知的財産権」問題に関する第一人者でいらっしゃいます。川島は同セミナーでコメンテイターを務めます。

さらに、2月1日(月)、神戸大学の科研費研究プロジェクトとCPRCの共催で、同教授及び島並良・神戸大学教授の両氏を講師にお迎えして、国際シンポジウム「独占禁止法と知的財産法の交錯―日中比較の観点から―」を開催します(13:30~16:30予定、於神戸大学国際開発研究棟1階大会議室、事前登録制)。こちらでは、泉水文雄・神戸大学教授が司会を、和久井理子・大阪市立大学特任教授・立教大学特任教授及び川島がコメンテーターをそれぞれ務めます。

神戸大学側のシンポへの参加希望者は、川島までメール送信し、事前登録をお願いいたします(お名前、ご所属をお送り下さい。)。定員(60名程度)になり次第、締め切らせて頂きます。

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中国発展改革委、自動車等海上運送業者によるカルテルを処罰

2015年12月28日付の日経新聞夕刊1面で紹介されたように、中国発展改革委が日本の4社を含む8社の自動車等海上運送業者に対し、価格カルテル等を行い中国独占禁止法13条に違反したとの決定を下し、合計4.07億元(当日レートで約75.5億円)の制裁金を課しました。

発展改革委報道発表(2015年12月28日)
(正式な処罰免除決定書〔2015〕1号及び処罰決定書はこちら。2016年1月13日追記)
毎日経済新聞記事(2015年12月29日)(調査過程や他国の関連事件等について詳しいです)
観察者記事(2015年12月28日)
(写真、関連航路図、処罰一覧表付きで分かりやすいです)

違反行為は、2008年8月から2012年まで4年以上、相互に既存業務を不可侵とし、かつ運送料を維持し、又は引き上げる目的で、自動車等製造業者による中国向け/中国発の海上運送業務に関する見積もり合わせや価格問い合わせに際し、頻繁に受注調整(談合)を行っていたというものです。価格の固定(13条1項1号)及び市場分割(13条1項3号)違反が認定されています。

本件では日本郵船が第1位のリニエンシー申請者(46条2項)となっています。各社の処罰状況は次の通りです。

(カルテル期間が長く関係ブランド及び事件が多く情状が重大だが、リニエンシー申請した企業)
1)日本郵船(日本) 本来10%のところ、第1位のリニエンシー申請者であるため免除
2)川崎汽船 (日本)  本来10%のところ、第2位のリニエンシー申請者であるため60%減軽して2014年売上額の4%の制裁金=2398.09万元(約4.45億円)
3)商船三井(日本) 本来10%のところ、第3位のリニエンシー申請者であるため30%減軽して2014年売上高の7%の制裁金=3812.11万元(約7.07億円)

(カルテル期間が長く関係ブランド及び事件が多く情状が重大だが、当局が未掌握の事実と証拠を提供した企業)
4)EUKOR(韓国) 2014年売上高の9%の制裁金=2.84億元(約52.86億円)
5)ワレニウス・ウィルヘルムセン(ノルウェー) 2014年売上高の8%の精査金=4506.13万元(約8.35億円)

(カルテル期間が長く関係ブランド、事件及び航路が少ない企業。本件違法行為では協力者の立場に過ぎなかった。)
6)CSVA(チリ) 2014年売上高の6%の制裁金=307.67万元(約2707万円)
7)イースタン・カーライナー(日本) 2014年売上高の5%の制裁金=1126.86万元(約2.09億円)
8)CCNI(チリ) 2014年売上高の4%の制裁金=119.84万元(約2223万円)

なお、1)~3)の「本来10%のところ・・・60又は30%減軽」は、報道発表では明示されていませんが、第2位は50%以上、及び第3位以下は50%未満のそれぞれ減軽という基準や通常、第2位は60%減軽されてきた先例(自動車部品及びベアリング事件。拙稿「中国独占禁止法における価格独占規制」公正取引771号(2015)参照)に照らして推測したものです(この点は正式な処罰決定書によって確認済み。2016年1月13日追記)。

また、報道発表の書き振り、特に「未掌握の事実と証拠を提供した」という46条2項のリニエンシー申請要件とは異なる表現が使われていることに照らすと、第1のグループのみがリニエンシー申請者であり、4)と5)の2社は46条1項の1~10%の制裁金を課す裁量の範囲内で処理されていると考えられます(この点は正式な処罰決定書によって確認済み。2016年1月13日追記。なお、根拠条文として49条(=具体的な制裁金額の確定時の違反行為の性質、程度及び持続時間等の考慮)も挙げられている。)。

各社、違反行為を停止し、コンプライアンスの強化等について約束しています。本件処罰を受けた各社の反応については、次をご覧ください。8)CCNIは見つかりませんでした。

1)日本郵船
2)川崎汽船
3)商船三井
4)EUKOR (英語)
5)ワレニウス・ウィルヘルムセン (英語)
6)CSVA (スペイン語)
7)イースターン・カーライナー

中国独占禁止法で海上運送関係の事案としては、商務部によるマースクラインらによるP3ネットワーク設立禁止決定(2014年6月17日)があります。この禁止決定については、拙稿「中国における最近の企業結合規制事例」公正取引779号(2015)で、やや批判的に紹介しましたが、本件カルテル事件については、日本企業3社が自首して来ている事件ですので、自動車部品事件やベアリング事件同様、「日本たたき」とか「外資たたき」という批判は当たらないと考えます(拙稿「中国独占禁止法の運用動向―「外資たたき」及び「産業政策の道具」批判について―」RIETI Discussion Paper Series 15-J-042 (2015)も参照)。

このところ、中国では自動車関係の価格カルテルや再販売価格維持の事件が続いていましたが(本ブログで未紹介の事件として、東風日産再販売価格事件(2015年9月10日公表))、自動車の海上運送コストが最終的に消費者価格にも影響してくることを考慮に入れると、本件も自動車購入者の利益を促進する法執行と位置づけることができるかもしれません。本件報道発表も「中国の輸出業者及び最終消費者の利益を害した」と説明しています。

なお、日本の関連事件として、以下があります。

公正取引委員会報道発表「(平成26年3月18日)自動車運送業務を行う船舶運航事業者に対する排除措置命令,課徴金納付命令等について

興味深いことに、日本事件では中国事件で第3位となっている商船三井が第1位のリニエンシー申請者として課徴金を免除され、逆に中国事件で第1位免除の日本郵船は日本事件で最高額となる約131億円の課徴金が課されています。日本郵船は日本側調査で商船三井に出し抜かれたことのリベンジとして、中国側調査では第1位申請を狙ったのではと推測されます。各国のリニエンシー制度の相乗効果が国境を越えて「自白競争」圧力ををもたらすことを示す典型例と言えるかもしれません。

2015年は大学間の異動でドタバタしましたが、来年は落ち着いて仕事に集中したいと思います。

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こちらに引越ししてきました

2015年11月16日、旧ブログから引越ししてきました。今年度一杯で旧ブログは閉鎖することになりますので、こちらのサイトの再登録をお願いいたします。

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神戸大学法学研究科に着任しました

10月1日、神戸大学大学院法学研究科に着任しました。早速、今学期からゼミ2つ、講義1つを担当しております。

この間、以下の評釈及び論考を公表しました。

1)「神鉄タクシー取引妨害差止請求事件控訴審判決(大阪高判平成26・10・31)」『公正取引』777号(2015年7月)82頁以下

2)「中国における最近の企業結合規制事例」『公正取引』779号(2015年9月)31頁以下

1)の元になる研究会報告の依頼があった頃、ちょうど神戸大学への異動のお話が進んでいたところだったので、不思議な縁を感じました。物理的妨害による「競争者に対する取引妨害」(不公正な取引方法一般指定14項)の典型例を提供する事例です。

2)の原稿は、主として2014年に禁止又は条件付承認となった中国における企業結合規制事例を紹介、批評しています。全体的に産業政策の影響が見られるとの厳しい評価になってしまいました。

目下のところ、本ブログは名古屋大学の元職場のサーバーを間借りさせて頂いておりますが、いずれ神戸大学又はその他のサーバーに引越しをしなければなりません。

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